第六夜

――この世界で存在しているはずなのに存在しないものはなんだと思う?
気づかないで欲しい…
傷付かないで済むから…



(ダーダイルさん…?!)
は飛び起きるように上半身を起こした。
薄っすらと記憶の端に残るのは砲撃の爆音と傾く船の形…。
あの人は無事だろうか…?と自分の考えに慌てて首を振る。

「元気そうじゃのう〜」
「はっ?!」
突如耳にした聞きなれない声には勢い良く顔をあげた。
――がんっ!!
「いっ!!」
「ぐあっ!!!?」
ともう一人の誰かの声が悲鳴をあげた。
顔をあげた瞬間に額の上部に激痛が走る。
「〜〜〜ったい!」
「ふふん、なかなか面白い光景じゃのう〜」
「面白がってんなよ!ナガレ!!」
顎を押えながら、くるっと緑色の髪をした少年は空中で見事な一回転をしながら、ナガレと呼んだ少年の横に立つ。
「…!!!!」
は驚愕の表情で言葉を失った。
(な、ナガレくんとクレちゃんまで?!)
まさかその世界ともこの夢は繋がっていたのか、と頭の隅で小さく首を振る。
「…ん?どうしたのじゃ??」
ナガレが大きな瞳でそっとの顔を覗き込んできた。
「う、ううん、いや、うん、なんでもないですよ?」
その表情に少しだけ焦りながらは小さく笑みを溢す。
「なぁなぁ、ねぇさん!会えて嬉しいよ!俺!」
その瞬間、満面の笑みでクレリューフが笑った。
ナガレもクレリューフもゲーム中でも登場した小さい姿のままである。
それがには安心感のようなものをもたらしたのかもしれない。
今までの展開を忘れたかのように、は小さく頷いてからクレリューフに笑顔を返した。

「…そういえば、お主、かなりの夢の量を彷徨っているようじゃの?」
急にナガレが音色を変えて漏らす。
「今、現実ではどれぐらい時間が経過しているとのじゃろうな」
(…え?)
「…ナガレ!」
そのナガレの呟きのような言葉にクレリューフが慌てて彼の口を押えた。
「…今の」
「なんでもない!なんでもないよ?!」
クレリューフが業とらしく大きく被りを振って笑顔を向けてくる。
余計に妖しい。
は少しだけ眉を寄せると、口をもごもごと動かしているナガレを見つめた。
彼はそんなの視線を感じ取ったのか、少しだけ妖しい光を瞳に過ぎらせる。
「…ふふん、いいことを教えてやろうか?」
「うん!!」
はクレリューフの制止も聞かずに、そっとナガレに耳を傾けた。
少しだけ背伸びをして、ナガレが耳元に唇を近づける。
「…お主、この世界で存在しているはずなのに存在していないものに気づいたか?」
(…存在しているはずなのに…していないもの…?)
小さな囁きが物凄いスピードで脳内を駆け巡っていく。
何かの謎解きにも似た感覚。
なぞなぞのような、簡単なクイズのような…。
「…ふふ、ワシはお主が望むなら…教えてやってもいいがの?」
「…?!」
は急にぞくぞくっとするような感覚に全身を襲われた。
耳元で囁かれていた音色は、突然に甘い大人の男性の音色へと変化する。
(な、なななな、ナガレ…さん?!)
心の中で精一杯素っ頓狂な悲鳴をあげていた。
「ふふ、どうしたのじゃ?そんな…間抜けな顔をして」
ナガレが愉快でたまらないといった感じで、ころころと笑う。
「…あんま、ねぇさんをいじめんなよ!!」
色気の漂う青年へと変化したナガレに気をとられていると、急には後ろからクレリューフに抱きしめられる。
「ひっ…?!」
は今度は一言だけ外に音を発することが出来た。
自分を包んでいる腕は、たしかに男の腕である。
(クレちゃんまで成長したー?!)
は頭の中で必死に理解しようと努めながら、自分の状況に心臓が追いつかなかった。
「あ、あ!ご、ごめん!ねぇさん!!」
すぐにクレリューフは真っ赤になって両手をぱっと離す。
「い、いいえ…」
髪の毛を整えるようには手を動かした。
(た、助かった…)
「ふふ」
しかし、それは束の間の休息だった。
ナガレの顔が近づいてきて、そっと唇を盗み取る。
(〜〜〜〜?!)
「……くくっ、本当に阿呆面じゃ」
唇を離したナガレは小さく口元に笑みを溢すと、睫毛の長い目でじっとを見つめた。
「…な、何してんだよ?!」
これをみたクレリューフが抗議の怒りをぶつけたが、ナガレはひょいっと肩を竦めると何事もなかったかのようにクレリューフの言葉を適当に聞き流している。
「…あ…うぅ…」
は思考回路が上手く働かないのか、言葉もろくに出なかった。
ただ、その代わり恥かしさや何かを隠すために身体が行動する。
「あ」
「ぎゃあっ?!」
ナガレが悲鳴をあげて、クレリューフが笑いを堪える。
に対して後ろ向きだったナガレの長い髪の束をぎゅっと引っ張ったのだ。
の思いがけない反撃にナガレは体制を崩して地面に尻餅をついた。
「あはは!ばーかばーか!」
クレリューフがけらけらと笑うと、ナガレは真っ赤になりながらに振り向く。
「お、おのれ〜〜っ!」
「先にやったのはナガレくんでしょ?!」
少しだけ涙目になりながら、は勢い良く言葉を吐いた。
「ねぇさん、ホント、最高!」
「くぅ…っ、お主、後悔してもしらぬからな…っ!」
ナガレがきっとを睨んだが、も負け時と睨み返す。

その時だった。
たちがいたのは小さな森のなかのような感じだったが、そこへ別の人影が現われたのだ。
木々と草花が小さく揺れる。
「あ…」
「なんじゃ、ラグナか」
「……あぁ」
(ラグナさん!!…うーん、このメンバーだと変な感じが…)
「…君は…大丈夫か?」
ラグナは冷静な口調でに顔を向けた。
真っ直ぐな瞳がの心を落ち着かせていく。
「あ、は、はい!…ちょっと和服着た変態には襲われかけましたけど・・・」
「なんじゃと?!誰のことじゃ?!」
「…自覚症状ないなんて哀れすぎますよねぇ」
ふぅっと業とらしく溜息を吐きながら、はラグナに言葉を投げかけた。
ラグナはその反応に困ったかのように片眉だけを動かして怪訝な表情を浮かべながら、言葉に詰っている。
「なぁなぁ、ラグナはを探してたの?」
クレリューフが無邪気な笑顔でラグナに笑いかけた。
「…あぁ。君たちが拾ってくれたようで安心した」
「そうだよね。悪夢に掴まるってこともあるもんな!」
(え、悪夢…?)
「…ふん、その可能性は少ないじゃろう?…それにこんな小生意気な女、悪夢の方から逃げ出すわ」
「…なっ!?」
悪夢という単語に引っ掛かっていただったが、ナガレの憎まれ口にむっと顔を歪める。
「…まぁ、喧嘩はよしたほうがいい。…少し先に街が在る。そこの宿屋の一室を借りている」
ラグナはナガレとの二人の間に入ると、小さな溜息を吐きながら続けた。
「リリアトス様もいらっしゃるし…なにより、にとって心強い味方となるような人物も一緒だ」
(…私の味方?)
「…へぇ」
「ふん、たかがしれとるがな」
「…とりあえず、そちらへ急ごう。空間が繋がっている間に、な」
ラグナの言葉にはっと顔をあげると、は大きく縦に頷いた。

(そういえば、ダーダイルさんも心配だけど…ルシフェルやコルチェも心配かも…)
は急に心細くなったように辺りを一度見回す。
(皆…大丈夫かな…)


―――さぁ…不思議な導きに私は答えましょう。
答えが知りたければ、問いなさい。
その代償に夢は終焉を迎えるでしょう。

…終わりたくなければ、…自分自身で答えを知りなさい…。

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