シーリアの秘話


「シーリア様」

凛とした音色が静寂に包まれていた部屋の壁に反射する。
重そうな瞼をゆっくりと上げながら、横目でシーリアは部屋に入って来た人物を見やった。

「……何かあったか?タナーザ」

褐色の肌に黄金色の髪。
男性と見間違うほどの容姿だったが、彼女はれっきとした女性だった。

「……お父上の研究施設についてですが」

「魔女……ニヴァ、か」

さらっとした金糸の様な美しい髪をかき上げながら、シーリアはふっと笑う。
それはまるで自嘲。

「何かわかったのか?」

「……いえ、残念ながら。……ただ、シーリア様の出生はやはり……」

タナーザはそのあと口をつぐんだ。
それ以上言葉にするのは、おぞましく、また主を愚弄してしまうからだ。

「……よい。わかっている、さ。……城下でも持ちきりだろう?俺の母親は、あの魔女ニヴァだと」

死者を操る魔女ニヴァ……。
歴史上、古代魔女と呼ばれる三人の魔女の中でも、非情で……なおかつ狡猾な蛇の様な女……。



――カルイリジ王国。
もともと商業国家だったバージニアが、突発的にバージニア帝国と名乗り、大規模な世界戦争を行った。
性急な軍勢であったはずなのに、バージニアは強く、その軍はまるで死霊に取り憑かれているかのごとく、悪鬼のように恐ろしかったという。
そのバージニア帝国の王の首を獲ったのは、紛れもなくカルイリジの現国王――シーリアの父親である――ライハーンズ王。
だが、ライハーンズは特定の女がいなく、王妃もとってはいなかった。
それなのに世継ぎが、シーリアがいた。
表向きは妾の子だとされているが、真実は……


「バージニアが暴走した理由に……魔女ニヴァが関わっていたとされること……」


バージニア王の首を獲った時、父親であるライハーンズはきっと魔女ニヴァと会っていたに違いない。
そして彼は、彼女とある契約を交わした。
……それが、シーリアの予想。

己の世継ぎを手に入れて……、そしてライハーンズは何を願ったのか。

だが、魔女ニヴァは――さらに己よりも計算高きライハーンズの罠にはまった。
契約は嘘だったのだ。

なぜなら、契約を交わしていれば、この王国に魔女ニヴァの姿があっただろう。
彼女は堂々と王妃として君臨していただろう。
だが、彼女はいない。
噂も戦争の終結とともに掻き消えた。
――存在を消したのだ――あの魔女ニヴァが?




やがて時代は過ぎていく。
幼いころからずっと気になっていた『母親』という存在。
少年期には父親が地下で行っている研究を調べていた。

だが、シーリアは二十歳を迎えた頃。
既にすべてに興味を失ってしまったのだった。

忘れたように。

忘れることで、自我を保つように。

一つの仮面をもう一つの仮面で隠して、彼は生きていくことにした。

瞼を閉じると思いだすのは、素直だった自分と――笑いかけてくる親友の顔。



「シーリア様……?」

蜂蜜色の長い髪を揺らしながら、淡い色の豪華なドレスに身を包んだ少女が息を切らして、自分の元に駆け寄ってくる。

「……俺は――……私は、今何を―――」

「え?」

星空を閉じ込めたような汚れなき瞳……。
大きな瞳で見つめられることに耐えかねて、シーリアは目の前の少女を強く抱きしめた。

「……レイカ殿、、俺は……俺は自分が恐ろしい」

震える声は静かに廊下に落ちる。

腕の中にある温もりを、いつか壊してしまうのではないかと不安に駆られていく……。





二人の大切な主の姿を廊下の端で見つめながら、タナーザは深いため息をこぼす。

――世界の終焉は希望を拾って過ぎ去った。

だが。

「魔女ニヴァの血肉で作られた存在だとしたら……シーリア様は……?」

――どうなるというのだろう?


シーリア様秘話です。

前からちょろちょろと触れているシーリア様の出生の秘密。
また大きく何かが動くのかもしれません。

フェンリル・ストーリーで止めたはずの『世界の終焉』
しかし、魔女ニヴァはまだ計画があったのでしょう。
そして、魔女ドロシーもこれに関わってきて……。

大変なことになってきました!!……ちゃんとすべての物語を皆様にお届けできるのか!それは謎です(ぇ)

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