トリシュの秘話

――血が灰色の空を舞う。

こんなにも鮮やかに……、それは生きているかの如く。

いや、最後の煌めきを、彩っているだけなのかも知れない。


「トリシュ、ワシの下に隠れておいで」

低い大地の響きのような、力強いドミニオンの声が、小さなトリシュの頭上に降り注いだ。
優しい音色だった。

そして再び、トリシュは意志を固めて、ドミニオンの下から、僅かに見える外の景色をのぞき込む。
鮮血は止まることなく、すべてを埋め尽くして行く。



――突然、仲間たちが殺し合いを始めた。
白銀に輝く美しい肢体が、真っ赤に染まっていく様は、何か神々しさを感じさせる。
だが、そこにあるのは、恐怖だ。
トリシュはぐっと、歯を噛みしめ、溢れそうになった涙を飲み込む。

轟音のような仲間たちの悲鳴。叫び。
阿鼻叫喚の地獄の中で、トリシュはただただ、嵐が過ぎ去るのを待つ。

ドミニオンの立派な前足は、鋭利な刃物によって切り裂かれていた。

「だ、大丈夫、ドミニオン……」

尊敬する伝説の竜。
人間たちの間で密やかに紡がれる、伝説の英雄マック・アーレンの竜。
それがドミニオンで、ホワイトドラゴンの中でも、彼は最強を誇っていた。

無残にひきちがれた四肢の累々……。
大丈夫?と聞くことすら間違っているであろう、この状況。
だが……

「あぁ、大丈夫じゃ。……いいから、お主は気配を隠して、ワシの身体に隠れておいで。
……あぁ、しかし、口惜しや……。ここで我らの血筋は絶えてしまうのか」

優しげな口調とは裏腹に、呼吸は荒く、ドミニオンは苦しそうだった。

「……ドミニオン、キラキラ光る糸がたくさん見える……」

ドミニオンはトリシュの言葉に目を見張ると、『あぁ、そうか』とつぶやいた。

「トリシュ……。未熟なお前を遺して逝くのは、忍びない。
だが……これも天命じゃて。
……微かに、旧友の匂いを感じる。……お前は、我ら一族の最後の希望。
白銀の鱗を輝かせ、どこまでも高みを目指しておくれ。そして、我らの名を世界に知らしめるのじゃ……」

「わかった、わかったから、もうしゃべらないで。ドミニオン、僕は一人ぼっちは嫌なんだ」

「……なぁに、お前はひとりじゃないよ。……もうすぐわかるじゃろう。
お前は森羅万象、すべてを知ることのできる唯一の竜……。
ワシが作った伝説を超え、……お主はきっと新たな物語を紡ぐのじゃ……」


やがて、トリシュは近づいてくる何種類もの人影に気がついた。
ドミニオンは最後の力を振り絞るように、駆け寄ってきた彼の旧友に向かって言葉を発する。

美しい銀髪と銀目。
ドミニオンの影から、トリシュはもう一人の銀髪銀目の男を発見した。

若き彼を見た瞬間に、ドクンっと心臓が脈打つ。

「約束通り……、お主の息子に捧げよう」

ドミニオンの言葉に押されて、トリシュは一歩足を進ませる。

……それは彼にとって、彼の人生にとって、大きな最初の一歩だったのだ……。

トリシュくん秘話。
秘話?というか、まぁ、ゲーム中に語られなかった、部分といいますか。

血生臭い感じですが、楽しんでいただければ幸いです。ありがとうございました。

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