クリスの秘話


――…パラリ…


私が話すことが出来るのはきっとその物語だけ。
そう…若い罪人の物語。
金色のウェーブのかかった髪と、空色の瞳を持つ…少年の犯した罪。
それしか…紡げないでしょう。
そしてこの唇は語らないでしょう。


――パラ…パラ…


薄っぺらな紙を捲る音だけが、そっと耳元に進入してくる。不思議なほど、静穏で。
心はぽっかりどこかへ置き去りにしてしまったかのような感覚が、ずっと付きまとっている。
貴女は涙した私の頬を拭い、優しく笑ってくれるけど。
きっと心の中では怯えている。…そうでしょう?
それでも、気丈にも微笑む貴女だから…。私は許されたと思うのでしょう。許されるはずもない私なのに。


――…ギシ…


音は激しい騒音のようにまだ幼い心の少年に響いた。
はっきりいって少年は耳障りだと思っている。
古い木造りのベッドは、揺さぶられることになれてもいなかったし、存在を脅かすほどの体重の運動に耐えれるはずもなかった。
ギシギシ…と音を立てるのは必然で。
壁の薄い隣の部屋にいるクリスがいかに耳栓をして穴を塞ごうが無駄な行いだった。
ぎゅっと瞼を閉じて、布団を頭から被る。
だけど、酷く響く高音域の女の声は掻き消えない。
「あっ、…あぁっ!…あんっ」
繰り返す床の音と、女の喘ぎ声。
父親のいない夜は毎晩と繰り返される。たまに混じる知らない男の声は脳をくりぬいても、きっと焼きついて離れないんじゃないかとさえ感じていた。
母親だと思われる女の声は、行為の最中はただの女。

(殺したい)

呟いたのは心の闇。いつの間にか住んでいた悪魔。
そう責任転嫁のように偶像すれば、誰かは納得するかもしれないし、私の罪の意識は多少免れるかもしれない。
だけど、少年ははっきりとした意識の中、虚ろに眠っている母親へと斧を振り下ろした。
おかしなことに、その映像は鮮明に思い出されて。
貴女が吐き出してしまうぐらいリアルな感触を伝えることができるぐらいだ。
斧を強く振り下ろしたとしても、到底子供の力ではなかなか人間の身体は切断できなかった。
思いっきり空を切っても、どうしても図太い骨が邪魔をする。引っかかると、ごりごりとした音が頭に痛いほど響き、その不快な感触が指を伝い、手に振動し…腕を重くする。
今思えばよくやったなと尊敬すらしてしまうよ。
私は苦笑して、怯えているであろう貴女の手を握った。
不思議なことに震えていたのは私のほうで、貴女の手を握った瞬間に…温かい何かに包まれた感覚に陥った。
温かくて、柔らかくて。
あぁ…やはり貴女は私の救いなんだなと実感する。


――カチャン…

バラバラに切断することに成功した不揃いな肉片たちを煮込み、帰宅した父親の食卓に並べた。
スープとして、あの女を飲み込む。
父親は一度動きを止めて、少年を眺めた。
いつも寂しそうに笑っていたはずの少年が、その時だけは妖しいほどに美しい笑みを浮かべていたせいかもしれない。
「…あいつ、遅いな」
そうぽつりといって、父親は全てを飲み干す。
少年も首を傾げて、スープを飲み干した。
「いつものことだよ」




――パラ…パタン


本を閉じて、私は貴女を抱きしめる。
枯れていたはずの涙は、いくら貴女が拭ってくれてもあふれ出してきていた。
綺麗な貴女の衣装を汚してしまうと思いながら、離れることができない。
抱きしめている腕の力は、緩めることは出来なかった。
離してしまうと貴女が消えてしまう不安感が募っていくから。

「大丈夫ですよ」

優しい音色が耳に心地良くて。
早く貴女で更新したいと思った。
脳裏に張り付いて消えない闇の中の喘ぎ声。
それを愛しい貴女で更新したい。

…私の罪は許されることはないけれど、貴女が微笑んでくれるだけで、私自身は救われるのです。
クリス氏、秘話…。
ユキトさんから引き続き、なにやら暗い話が続いているような気がします。…がーん(爆)
よく私は暗い話が嫌いだといいながら、案外自分が描いちゃっている人間なんですけど。
酷いですよね(ぉ)
そしてクリスさんのお話の根本的な見本として、有名な杜松の木という話を取り入れさせていただいております。
うーん。だーく…

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