ユキトの秘話


――生まれてきたことが、これほどにまで馬鹿らしいと思ったことはなかった。
そう、なんて三流作家が描く不幸ストーリーの人生だろう。



そう心の中で呟いたユキトの表情は、10代前半とはいえない…何もかもを悟ったような色でいっぱいだった。
狭い部屋の中に立ち込めるのは、自分の体臭ではない黴臭い石牢の匂い。
それだけで憂鬱になりそうなのに、追い討ちをかけるように金属の錆びた味も空気中を漂っている。
ボロボロの白い布雑巾のような格好を強いられ、手首と足首には冷たくて重い枷が取り付けられていた。

それは彼が逃げないために。

だけど、皆知っていただろう。
本当はそんなものは必要ないってことは。
何故なら彼は逃げないからだ。
そう…ユキトは逃げる意志のないまま、きっと永遠にそこに蹲っている。
1週間――…いや、2週間は軽く経過している頃だろう。
ユキトがそこに影を落としてから。


――喉が渇いた。涙は枯れた。湧き出のは…あの人への嫌悪だけ。


ユキトの視線がちらりと動いた。
冷たい苔の生えた石の壁を見る。一点見ては、また次の角を。
それを繰り返して、もう一度出発点へ戻ってきた。
疲れると瞼を閉じ、祈ることもしないまま眠る。
眠っていると、ここがどこか忘れることができた。
意識がぷつりと音をたてて消える。
それは心地良い音色。
唯一の救いは…そう寝ることだけ。


「永遠に寝ようと思うなら…舌を噛めばいいんだよ」


女の人の声が聞こえた。
この世で一番嫌いになり、憎くてたまらない対象の女性の声にやけに類似している気がする。
だけど、絶対に彼女であることはありえない。
自分の息子と引き換えに大量の金を貰っていた。そんな母親がのこのこと地下牢へやってくるはずもない。
「…くっ、くくっ」
ユキトは自嘲気味に笑った。
実の母親に売られてしまった悲しみが痛すぎて麻痺したのかもしれない。
もしくは…家畜のように扱われ、中年の男性に無理強いで犯されてしまったせいかもしれない。

――生まれてきたのが間違いだったかもしれない。

妙に大人ぶった声が脳内で響く。
そうだ。とユキトは瞼を持ち上げた。視界に入るのは相変わらず、苔の生えた石の壁。
血糊のようなものが乾いた足枷に目をやり、上半身を持ち上げる。
「…生きなければ」
ユキトは誰に話しかけるわけでもなく、そっと呟いた。
水分が足りない状態だったせいか、声はかすれ、痛々しく顔は腫れている。


――あの人の思い通りに死んでたまるか。


母親に拒絶された生。
受け入れられることのなかった自分という存在。
ある人は可哀想だと同情するかもしれない、涙を流すかもしれない。
だけど、ユキトにはそんなものは必要ない。
生まれた意味を。
生きているという実感を。

自分という存在がこの世に在ったという証を…この手で創りたい。


やがて若い芸術家は、枷を解き放ち、屋敷を抜け出した。
世界を飛び回り、自分自身の力で生き抜いていく。
彼が創作するのは彼自身の叫び、嘆き、幸福、悦び。

人間らしくありたいと願う――自分自身。
ユキトさん秘話でした!!読んでくださった方々、サンキューであります!(敬礼)
なかなか秘話の方が描いていけなかったので、すみません。
大変お待たせいたしてしまったような気配がしますよー。おぉ、申し訳ない(土下座)

ユキトさんは少年妾になってしまう過去が痛々しく、だけど、そんな過去があるはずなのに強く我が道を突き進む感じで。
うん、強いなと思いますね。拍手(ぉ)

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