トーマスの秘話
――何故あの時、逃げなきゃ…と強く感じたかは謎で。 ただただ己の立場がすごく大事だった。 身体中から沸き起こるのは現実逃避。 …そう、私は本当に恐くて。 自分がこの大きな戦いに巻き込まれてしまうのが…死ぬほど恐ろしかったんだ。 アゼライナ王国は呪われていた。 それはずっと…長い時間をかけて、しかし確実にこの国を蝕んでいっている。 トーマスは妙に冷静に考えながら、隣で机にうつ伏せになって眠っている友人を眺めた。 この国では12の精霊源を扱える男子を精霊騎士と称し、必ず死を迎えてしまう姫君を助けるため守るという仕事を与えている。 その仕事は馬鹿らしくて。 実際に成人を迎えた姫君はいない。 そう…それが王宮の真実。 精霊騎士がいようがいまいが、結局は死んでしまうのだから…。 トーマスの友人は炎の精霊騎士だった。 彼の熱血な性格を考えれば、誠に性に合っているといっても過言ではない。 「…まだ眠っているのかい?」 トーマスは反応のない友人を眺めながら、ふぅっと溜息をつく。 最近、彼の友人の仕事量は半端なく増えてきていた。 姫君を守るために、昼夜を問わず働いている。この城に魔物たちが入ってこないようにと、最善を尽くすため、全力で結界を張り巡らせながら。 それだけならいいだろう。 だけど、トーマスは知ってしまっていた。 大きな戦争が起ころうとしていることに。 商業国バージニア国。 そこから発生した戦争の火種。 やがて大きくなっていくであろうそれは、やけにトーマスに焦燥感を与えていく。 友人は精霊騎士をやりながら、聖騎士もこなしていたため、その所為で忙しくなっている。 こうやってトーマスの研究室を訪れては休憩をいれるのは…この時にしか、安らげないからだ。 そう…それぐらいに事態は緊迫していて…。 ――私がそれを手にしたのは酷い偶然。 だって、それを手にしなければ、私は逃げることもできなかっただろう。 苦しんで苦しんで。 そのままアゼライナ国の一兵士として死んでしまうはずだった。 だけど…。 「…これは?」 トーマスは友人が持っていたファイルから一枚の紙切れが零れ落ちたことに気づいた。 覗き込むと、そこには小さな模様が描かれている。 円形を作っているそれは蛇のように入り乱れていた。 …魔方陣といえばいいのだろうか。 炎の精霊騎士である友人は、姫君を守るため。 聖騎士でもある友人は、この国を守るため。 どちらも大切に想っているために、禁断の技を使用しようとしているのではないか。 そしてトーマスは精霊を研究することに対して大変な意欲を持っていたため、すぐにその技に魅了された。 友人の懐から落ちたその紙切れを隠し、友人が起きた頃には何も無かったように接する。 …トーマスはその日逃げ出した。 逃げ出す途中で、自分の血で描いた、例の紙に描かれた魔法陣と同じような模様を砂漠の土の上に描いて。 炎の精霊を召喚する。 炎の精霊の名前は――ヒバナ。 契約は接吻。 触れ合うのは熱き魂と、乾いた唇。 禁断の技だった、精霊召喚。 それはトーマスという一人の臆病な人間によって、普通の職業として成り立っていく。 古くから秘密にしてきたアゼライナの歴史が表に流れてしまった隠れた真相。 たった一人の男の存在によって。 |
だめだ…!眠い(ぉぃ) 眠いから…眠いから意味不明だわー!!(ぎゃー) あ、後で、訂正できるところは訂正しますね…?(ドキドキ) ごめんなさい(涙) これからもこんなやつですが、よろしくお願いいたしますー!! |
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