フォードの秘話

『フォード、愛しているわ!』

(声が聴こえる)

『フォード!!貴方の事を永遠に愛している!!貴方が結婚しようって…そういってくれるのをずっと、ずっと待っていたの!』

(懐かしい…声が、聴こえる…)

『あぁっ、明日は結婚式ね!…ふふ、まるで…夢のよう!』

(…っ、駄目だ!!そっちに走っては…っ!!)

――暴走する馬の蹄の音が、大きな音を立てて横に崩れる馬車の影が。人形のように脆く横たわるのは…

『…イヤ…っ、こんな…っ、私、ワタシハ…イヤァァァァァァアアアアアアァァァァアアアっ!!!』

(…メシリア…っ!!何故だ、何故…!!俺の手を振り払って、俺の目の前で…っ!!二度もっ!!)


「はぁ…はぁはぁ…」
突如悪夢から目覚めたフォードは全身が汗だくだった。
ぼんやりと一つしかない木造の窓から陽光が部屋の中を照らす。
どうやらもう朝のようだった。
柔らかい空気が森の中に佇む、ただ一見の小屋の中を流れる。
「…また、お前の…夢、なのか」
忘れたいと願いつつも、決して忘れたくない現実。
もしも忘れたいと本気で願っても、それは叶わぬ夢。忘れることなんて絶対にできないのだから。

「ふふん、今日も早いな。お主は」
一匹の美しいユニコーンがいつの間にか部屋の中にいた。
四本の脚を綺麗に折り曲げては部屋の真ん中に座り込む。
そしてそこから透き通るような目で、じっとフォードを眺めていた。
まるで先刻見た悪夢を覗くことができるかのように。

「おっと、出て行けと思われても、我はでていかぬからのう。…ふふん、助けねばよかったと思っておるじゃろう?」
「……」
「はははっ、我には心を見透かす力があるからのう。…重傷だった我を…助けたのはお主じゃ」
「……」
「…我には…こうやって毎日、抜け殻のようなお主を見に来ることぐらいしかできぬ。だが、それでも…」
ユニコーンはふわっと美しい女性への姿へと変化した。
「お主の心を開く鍵になれば、と思っておるのじゃ」

フォードは伸びてきたユニコーンの白い手を振り払うと、さっさと小屋を出て行った。
ユニコーンは小さく溜息をつくと、出て行く後姿を眺めながら意地悪くにやりと笑う。
「…ふふん、だいぶ人間臭くなってきたものよ」

外に出たフォードは辺りを注意深く見回しながら、小さく眉を上げた。
(血の匂いがする)
微かに異臭がフォードの鼻腔をくすぐった。
少しだけ早歩きで森の奥へと足を踏み入れる。
引き返そうか、と何度も頭の中で考えては首を横に振った。
もう既に、彼は踏み込んでしまっていたから。

森の中には小鹿が同じ場所をくるくると廻っていた。
そこには親鹿なのだろう、1匹の鹿が倒れこんでいた。
狩人にでもやられたのか、もしくは狼にやられたのか。
腹には大きな傷があって、出血多量で死んでしまったようだった。
もう既に虫がたかってきている。
「…どうして、お前はそこから動かない」
フォードはすぐ傍に近づいても逃げない小鹿に言葉を投げかけた。
返答はない。
ただ、物悲しそうな鳴き声が彼の胸を締め付けるだけだった。
「…動かないと、死臭を頼りにお前を狙うものたちがくるぞ?」
やはり返答はない。
「…二日持てば…いいほうだが」
フォードは右手に気集中させた。
不思議な光が溢れ、フォードの全身を温かいものが流れる。
――メシリア、どうか、生き返ってくれ!!
あの時は無我夢中だった。
だから、自分が犯した間違いなど気づかなかった。
そして、自分にその力があり、それが…彼女を余計苦しめることになるなんて。
いや、あの偶然が…まさかそんな結末を迎えさすなんて!!
――親鹿よ、もしもこの子を想う気持ちがあるのならば…せめて…安全な場所まで…案内してやれ!
小鹿はぴくっと両耳をたてた。
親鹿の体がぴょんと跳ね上がり、大きな目は何度も瞬きを繰り返したではないか。
――生き返った、と誰もが想う瞬間だった。
「よく聞いてくれ、それは…死んでいるんだ。…だが、お前を仲間の場所まで案内させるまでは…お前の…親だ」
二つの獣の影は颯爽とより森奥深くに消えていった。
フォードは黙ってその姿を見送った。
やがて生き返ったと想われたあの親鹿は無残な姿で二度目の死を受け入れることになる。

腐敗し、肉が零れ落ち、骨が丸見えになってしまう。
そう…――かつて愛したフォードの婚約者…メシリアのように。


(俺の救いの手がいつも誰かを傷つけている…。そんなことはわかっている。
だけど、どうしようもなかった。彼女を、彼女を本当に愛していたのだ!!…俺は…彼女とともに、死ぬべきだった…)

自分で傷つけた目の傷が疼くように痛んだ。
眼球が彼女に見せてしまった悪夢。
骨の丸見えの頬。髪の毛の抜け落ちた頭。
二階から飛び降りた彼女のあとを、どうしてフォードは追わなかったのかと疑問を繰り返していた。


――「フォード、くんだね?」
木の精霊騎士になる運命が待っているから躊躇していたのだとしたら…
(俺はきっと今度は迷わない。…お前のために迷わず、この醜い体を捧げよう…)
少し長くなってしまいましたが、フォード氏のお話でした!
はい、書いていてとても楽しかったです。
フォードさんのストーリーは好きなんですよ。
普段は穏やかで、優しい大人のフォード氏が、恋愛感情になるととても情熱的になる。
それが描けるストーリーだったので(笑)
ゲーム中でも語りますが、やはりこの話は抜けさせたくなったでスね。
フォード氏の深い愛情が伝われば幸いです。

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